第7章 第六話 千年の剣士
ビットリオ。
汽車の中で目を通した資料に書かれていた、1000年も生きている剣闘士。
イノセンスを持っているであろう彼の事だった。
2人が顔を見合わせた時、馬の足音と主に男の声が響いた。
「サルディーニ家において、パレッティ子爵よりご命令が下される!賞金を得んとする者は、直ちに集合せよ!」
街中にいた男たち、そして彩音と不二の後ろにいた男が、ゆっくりと歩き出す。
「周助、どうする?」
「…。サルディーニ家のクラウディアさんが攫われたのは三日前。しかも攫ったのがビットリオだというのなら…」
自分たちの目的と無関係じゃない。
情報収集のために、2人はサルディーニ家へと向かった。
「イノセンス、発動…!アーリ!デスサイズ!」
背中に羽が生え、その手に大鎌を持つ。
ユキサは空に飛んでるAKUMAへ向かっていった。
「六幻…!」
地上のAKUMAが、神田によって次々と倒されていく。
2人の様子を、ペドロが少し心配そうに見ていた。
ふらふらと地へと降り立つユキサ。
大丈夫か?と神田も歩いてきたが、彼も疲労を滲ませている。
ユキサはかつて、あの村で一人で戦っていた身だ。
「このくらい、大丈夫。私なんかより神田の方が心配だよ」
AKUMAとの戦いのみの自分と違う。
神田はあのビットリオとも戦い続けているのだ。
早くどうにかしないと消耗戦になる、とユキサは焦りを滲ませる。
―――――手が無いことはない、自分がビットリオとの戦いに参加できれば。
(もしくは直接参加できなくても、せめて魔法を使わせてもらえれば…)
肉体強化の魔法がある、一時的に能力を上げるものだ。
(でも、神田は多分、それさえも…)
じ、と見つめた先の神田は、何かを考えるようにして俯いていた。