第7章 第六話 千年の剣士
それは…今から1000年も前の昔のこと。
ローマ。
この地を治めていた領主様には、サンドラという名の美しい姫君いた。
16歳ともなるとその神々しいまでの美しさは多くの人々の話題となり、ギリシャ、オリエントの男たちが妻に迎えようと海や山を超えて集まってきた。
だが姫君は、どんなに良い縁談であろうと、首を縦に振らなかった。
それでも言い寄る男たちに、姫はこう言った。
『わたくしは、この世で一番強い男の妻になります』
そしてその力を試すためにその領主家に仕える剣闘士、ビットリオと戦うように言われた。
ビットリオは戦った。
世界中から集まった武芸自慢の男たちを相手に、戦い続け、一度たりとも破れなかった。
その戦いは、姫が病でこの世を去ってからも続き、1000年経った今でも続いているという。
雷雨が吹き荒れている。
マントのフードを被りながら、柱の陰からユキサは2人の様子を伺っていた。
ビットリオと神田。
向き合って、お互いに武器を構えている。
神田と共に任務で訪れたローマにて。
イノセンスは発見した。
しかし持っている相手が悪かった。
「神田…」
大丈夫かな、と不安そうに見つめるユキサに、ファインダーのペドロが近づく。
手を貸したい思いでいっぱいのユキサだが、ビットリオは男しか相手にしない。
何より、神田がユキサの手を借りるのを嫌がった。
剣士の戦いとしてのプライドなのだろうか。
「サンドラ姫の名により、お相手致す…」
こい!!!と叫んだビットリオに向かって、神田が走った。
雷光が、辺りに閃いた。