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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス



「私ね……女神様のことを信じてる。あの世の予定では本当はお姉ちゃんは死ぬ予定じゃなかったから、特別に私とお話させてくれるんだって」


ゆめの口調には熱があり、まるで何かに心酔しているかのように見える。


「あの時……ビルの倒壊に巻き込まれた時、お姉ちゃんは私を庇ってくれた。でも、瓦礫の下敷きになったお姉ちゃんの手が冷たくなっていくのに、私……何も出来なくて……」


徐々に声が掠れていき、その瞳には涙が浮かんでいる。溢れる涙を拭いながら、ゆめは搾り出すように言った。


「だから私、星の女神様にお願いしたの。クリスマスはお姉ちゃんと過ごしたいって」


彼女は深呼吸し、感情の乱れを整えるように息を吐いた。

その瞳は真剣そのもので、先程までの儚い様子とは違う。強い意志を以て真っ直ぐにこちらを見据えていた。


「馬鹿だって、思ってるでしょ?」


彼女は自嘲気味に笑い、目を閉じた。


「でも……お姉ちゃんにもう一度会いたいの。会って謝りたい。あの時、私は何も出来なかったから……」


その言葉には、どこか自責の念が宿っている。


「そっか」


悠仁は一言返すのが精一杯だった。

彼女は姉を想うが故に、“星の女神様”に縋ったのだろう。

その想いは痛いほど分かるし、共感できる部分もある。けれど、彼女のやり方が正しいとも言い難い。


「夢野さん」

「ゆめでいいよ。歳近いでしょ?」


明るい声音に釣られるようにして悠仁が視線を上げると、彼女は悲しげな笑みを浮かべたまま、こちらを見つめていた。


「……分かった。俺も『悠仁』で」

「うん」

「俺、友達待たせてるから行くよ。またゆめのところに話を聞きに来ていい?」

「もちろん。いつも退屈だから大歓迎」


お互い微笑み、握手を交わす。伝わる体温が、薄幸の少女の行く末を案じる彼の胸をじわりと熱くさせる。




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