第7章 寂しさ
悟は本当に数分ほどでシャワーから上がって来たらしく、私がベッドに入ってわりとすぐに寝室の扉が開いた。
その音に思わずビクリと肩を揺らすと、入り口からは背中向きになるように丸まって寝ていたからか「寝ちゃった?」という悟の優しい声が聞こえたあとギシリとベッドのスプリングが軋み背後から私を抱きしめるようにして悟がベッドへと寝転んだ。
寝てるフリをしたいものの、悟にはたして狸寝入りが通用するのかと一瞬考えてすぐに答えがでる。うん…絶対に無理だ。絶対に狸寝入りなんてしてもバレるのが落ちだ。諦めたように「起きてるよ」と呟けば、抱きしめられているせいか耳元で「良かった」という穏やかな声が聞こえた。
うん、もうさっきまでのタバコと甘い香水の香りはしない。いつもの悟の香りだ。私と同じシャンプーの香りがする。
そんな事に、先ほどよりは何故だか少しばかり心が軽くなってほっと小さく息を吐き出した。
「今日帰って来たんだね、ビックリしたよ」
それはどう言う意味のビックリだろうか
「うん…今日帰れば明日は休みになるし良いかなと思って」
そんなこと何にも考えていなかったくせに、我ながらつらつらと言い訳じみた言葉が出てくるものだ。
「そっか、早く会いたかったから嬉しいなぁ」
うん、私もだよ。早く会いたかった。そう思うはずなのに…先ほどまで考えていた言葉が頭の中を埋め尽くしていて思わず言葉に詰まる。