第6章 僕の可愛い人
「え…なん…で?」
本当はもっと前から気が付いていた。きっと玄関を開ける少し前辺りから。
だけどそんな事あるはずないって、会いたすぎて呪力感知がイカれたんだと思ってた。最強の僕でも恋の前ではポンコツか…なんて思いながら扉を開けたんだ。
だから、リビングのドアを開けた瞬間。やはり間違える事のないその呪力と気配に僕は大きく目を見開いた。
そんな僕の声に気が付いたのか、入り口からは背中向きになっているソファーからひょっこりとその小さな身体が現れて、僕は再び「何で…」と呟いたのだった。
目の前には先ほどまであんなにも会いたくて仕方ないと思った愛しい人の姿。
「おかえり!悟!」
弾けるような満面の笑みに、下げられた目尻が可愛くて。思わず息を飲まずにはいられない。
「た…だいま…」
驚きのあまり情けなくそんな声しか出なかった僕に、彼女はやはりキラキラとした笑顔で笑うと「ビックリした?」と意地悪気に笑うのだった。