第20章 執着
「それで、一体何があったんだ?」
二人ともシャワーを早々と浴び、硝子にパジャマを借りてくつろいだ体制でお惣菜をつつく。
硝子の手にはもちろんお酒が握られている。何だか質の良さそうな赤ワインだ。
「悟に、家は見つかったかって聞かれた…私はてっきり一緒に住んでる事を受け入れてくれた時、これからも今までと同じように一緒に住んでて良いんだって思ったんだよね。でも実際は違った…家が見つかるまでって意味だったみたいて…本当恥ずかしくてどうにかなりそうだったよ」
「はぁ、本当にアイツは…」
硝子は呆れたような溜息を吐き出しながら、ゴクゴクと勢い良く赤ワイを喉へと流し込む。
「でもよく考えたらそんなの当然だよね。ただの幼馴染が一緒に住んでる意味なんてないもん」
「ただの幼馴染じゃないだろう」
「まぁね、でも今はただの幼馴染みたいなものだよ」
五条家の中でも、悟の記憶の事は彼が以前から信頼していた数人にしか伝えていない。結婚式まであと一ヶ月なわけだが、もちろん結婚式の準備は中断されているし、その話が悟に漏れないようかなり気を配ってくれているらしい。