第19章 大切な記憶
「ちょっと悟に用があって待ってたんだ」
「そうなんだ、珍しいねぇ」
ベンチから立ち上がった私の前で悟は足を止めると、上着のポケットへ手を入れたまま首を傾げる。
「えーっと、家のことについてなんだけど」
「家?それがどうかしたの?」
「悟は多分記憶に無いと思うんだけど、実は今私達一緒に住んでるんだ。悟の家で」
その私の言葉に悟は少しだけ口を開きキョトンとして見せる。それはそうだ、ただの幼馴染が一緒に住んでいるなんて意味がわからないだろう。そもそもいくら仲良しの幼馴染だったとして、異性である私達が一緒に住むのはどう考えてもおかしい。
ましてやお金に困っているわけでも無いのだ。彼からしたら本当に不思議で仕方がないだろう。
「え、僕達一緒に住んでるの?何で?」
その言葉に胸がツキンと痛む。
だけど私はそれを誤魔化すように胸元の服を握りしめると、先ほど考えた嘘の理由をつらつらと話し始めた。