第19章 大切な記憶
それにきっと今後は、このことがなるべく周りの人達にバレないよう私は行動を取らないといけない。悟が記憶を一部失っていると悟られてはいけない。
呪術界の人間ならば、悟が私を好きだと言う事はみんな知っていると以前傑と硝子が言っていた。皆んなとは一体どこまでのことを言っているのか分からないけど…だけど高専に良く出入りしている人達は確実に知っているのだろう。
バレないためにも悟と距離を置いた方が良いんだろうか。それとも今まで通りでいいのかな…
だめだ。よく分からない。
ただ、悟と婚約者として一緒に暮らすようになる前に戻るだけなのに。彼を好きになる前の私と同じように接すれば良いだけなのに。
今ではもうそんなこと、遠い昔のようで思い出せもしない。
それにさきほどの悟を思い出す。いつもならばすぐに私へと駆け寄って笑顔を向けてくれるはずなのに。さっきの悟は確実にそうではなかった。
私へと話しかけてくれたし、もちろん笑顔だって見せてくれた。だけどそれはいつも私に向けられている物とはまるで違う表情で…私だけに向けられていたあの温かで甘い表情ではなかったのだ。
周りの人達を見る時と同じ…私は彼の特別でも何でもない。そうだと言うことが嫌でも分かった。