第4章 特級呪物
だけれど、そんな非日常的だったあの一日はあっという間に過ぎ去りいつも通りの私の日常がまたやってくる。
悟が出張に行っている事により、恥ずかしくて沸騰したようになっていた脳内も落ち着いて今ではすっかりいつも通りだ。
むしろ、婚約したことが夢だったんじゃないかと思うほど忙しなく働いている。
今日は高専での授業の受け持ちもなく、二級程度が数体の遠出の任務についている。距離は遠いものの、まぁ任務自体はすぐに終わるだろう。そんな事を考えながらも最後の一体を相手にしていた時だった。
ブーブーブーっと右の上着のポケットに入れていたスマホが音を上げる。それに気がつき片手でスマホを耳に当てながら反対の手で呪霊にとどめを刺すと「はい、どうしたの?」と相手が話すよりも早く声をかけた。
『お疲れ様です、伏黒です』
電話の相手は私が副担任をしている受け持ちの生徒、伏黒恵君からだった。
元々は去年まで三年生の担任をしていたのだが、今年からは出張が多く忙しい悟のサポート役として一年生の副担任を受け持つ事になったのだ。
「お疲れ様、今日の任務確か仙台で特級呪物の回収だったよね」
私のその言葉に、恵君はいつもよりも少しだけ低い声を出すと『ありません、指定された場所にはありませんでした』と受話器越しから静かな声が聞こえてくる。