第3章 婚約者
明らかに行きたく無さそうな表情をしている悟だけれど、嫌々ながらも車へと乗り込むと手を振る私を切なげに見つめながらも伊地知君の運転する車は発進した。
そして悟の乗る車が見えなくなった瞬間、私はへなへなと床へとしゃがみ込む。
ど、どうしよう…悟とキスしちゃった…というか婚約しちゃった…
私と悟、今日から婚約者なの!?幼なじみだったはずなのに婚約者!?
しかも悟、本当に今までと雰囲気違うし!!甘いよ!見せてくれる笑顔も優しい声も言ってる言葉も全部全部何か甘い!!
今までと全然違う!!
たった少し今一緒にいただけでこれなんだから…一体これからどうなっちゃうの…?私、次に悟に会った時どんな顔したら良いの?
可愛いって言ったり、私と一緒にいたかったって言ったり…そんなの今まで一度も言ってきたことなかったのに。何これぇ…
しかも手繋いだり、キスしたり練習して慣れていけば良いって言ってたよね!?練習するってことは、これからそういうことをするって事だよね!?しかもその先も…って言ってた。その先って…そんなの一つしかない。いくら恋人のいたことがない私だってそのくらいわかる。
それを…私と悟が!?だめだ、頭が沸騰してどうにかなっちゃいそうだ。
しかも帰ってきたらご飯行こうって言ってた。今までならそんなの当然で当たり前で、行こう行こう〜!って感じだったけど、これからはご飯一つ行くにもデートってことになるんだよね??
デート…悟とデート…
だめだ。やっぱり恥ずかしくてどうにかなってしまいそう…