第10章 特級呪術師
「やっほー傑!お疲れ〜」
この声にピクリと反応した大きくガタイのいい背中は、ゆっくりと後ろへと振り返る。
振り返った先には機嫌が良さそうに片手を上げニコニコとしている五条の姿。
昨夜の事もありてっきり今日は機嫌が地の底レベルで、最悪は校舎を半壊させてしまうほどの喧嘩が勃発してもおかしく無いと思っていた夏油だったが、どうやらその心配はなさそうでホッと溜息を吐き出す。
むしろそれどころか五条は何だかやけに機嫌が良さそうだ。
「あぁ、お疲れ様悟。どうしたんだい?随分と今日は機嫌が良いみたいだけれど」
「まぁね〜昨日ヒナがめちゃくちゃ可愛いくてさぁ〜♡」
ニヤニヤとしながら自分の隣で歩き始めた親友は、婚約者の前ではきっとこんなニヤけた顔は見せないだろう。私や硝子の前ではいつも呆れるほどに惚気を聞かせてくるくせに、いざ本人の前では信じられないほどにカッコ付けているのだ。
よくもまぁ20年近くカッコつけを続けられると思う。普段はどうしようもないほどに適当で自由人で我儘が絶えない28歳児だというのに。
彼女の前では優しく面倒見の良い幼なじみなのだ。まぁ裏では彼女の恋愛事をことごとく潰してきたり、絶対にわざとだろう??と思うような場面で怪我をして彼女にだけは甘えた顔を見せたりしていた。いや、そもそも悟は無下限があるのだからそうそう怪我をしないはずなのに、彼女との任務の時だけ軽い怪我をしてみたりと、それはもう馬鹿みたいに一途な恋愛をしてきた。