第9章 嫉妬とやら
そっと握られた手を悟の左胸に当てると、ドドドドっと聞いた事もないほどに早打ちをしている心音が聞こえてくる。
それは想像していたよりもずっと早くて、目の前で余裕そうな表情をしている彼からは想像も出来ないような音で、思わず緊張していた身体からふっと力が抜けていくのが分かる。
「…本当だ、凄く早い」
「でしょ、自分でもダサすぎて笑えるよ」
「…ダサくなんてないよ、だって私達一緒ってことでしょ?悟も私と同じだけ緊張してるって分かって、少しだけ嬉しい」
悟の心臓に当てていた手をそっと離しニッコリと微笑めば「ふふっ、やっぱりヒナは可愛いね」と穏やかに笑みを見せた。
「触っても大丈夫?」
いつもよりもゆっくりもした口調で話す悟は、きっと私の不安を取り除こうとしてくれているんだと思う。
「…うん、大丈夫…だよ」
悟の心音を知って、少しばかり軽くなった自身の緊張を解くようにして小さく呟けば、悟は再び私のショーツへと手をかけた。
「もしも痛かったらすぐに言って、止めるから。ヒナが嫌がることはしたくない」
「…うん」
「ヒナ…もう一度首に腕回してくれる?そっちの方がヒナを近くに感じれて嬉しいんだ」
「…悟…私、緊張してわけが分からなくなるかもしれない…」
「大丈夫だよ、僕もだから」
「…腕に力入れちゃったらごめん」
「平気。だって僕最強よ?そのくらいどうってことないさ」
「…悟」
「うん」
「…さと…る」
「うん」
「さと…る…ふっ…ンん」