第9章 嫉妬とやら
「じゃあ私は先に行くよ」
私と悟の不穏な空気を感じ取ったのか傑が静かに部屋を出て行く。傑に改めて謝らないと…そう思うのに、今はそれよりも目の前の悟から目を離す事が出来ない。
何故なら、その表情は黒の目隠しで半分隠れていても分かるほど私を刹那げに見つめているからだ。
「…あの、悟」
どうしよう。自分がしていた先ほどまでの行動が頭の中を駆け巡る。それはまるで自分ではないような…だけど間違いなく自分自身が引き起こした行動で。思わず何と言って良いか分からなくなる。
だけれど、今はとにかく悟へ謝らないといけない。だってもしこれが反対の立場だったらきっと私も悟と同じ顔をしている。
「ごめん、悟。本当にごめんね…私…悟に嫌な思いさせた…」
ガバリと勢い良く頭を下げ強く目を瞑る。もしも悟が私のように呪いの影響とはいえ他の女性とイチャイチャなんてしていたら…嫌だ。嫌どころじゃない。すごく嫌だ。
それが例え硝子相手だとしてもきっと嫌だと感じると思う。
この前悟が浮気をしているかもしれないと疑ったけれど、浮気をしているのは私の方じゃないか。それが例え呪いのせいだとしても関係ない。悟を不快にさせているのだから、これは正真正銘最低な行為だ。