第8章 呪霊の体液

頬を染めるヒナは上目遣いで傑を見上げる。



は？可愛い。やめろ。そんな顔で傑の事見るなよ。つーかそろそろ僕の方見ろよ。



「大丈夫だよ、そもそもヒナが体液を被ったのは一緒に任務についていた私の責任でもあるしね」



うん、それは間違いない。傑の責任だ。ってそうじゃなくて…



「ヒナ！もう傑なんてどうでもいいからこっち見て、僕のこと見て」




限界だった。いや限界などとっくに超えていた。




傑といちゃつかれるのも、無視されるのも、そこには居ない存在として視界に入れてくれないことにも。




いきなり身体を起こし叫んだ僕に、ヒナはピクリと肩を揺らし「悟…」と小さく言葉を戻すと、今度は何を思ったのか顔を真っ青に染めていく。



「あ、の…悟…ごめんなさい…私…傑とその…」



自分が呪われていた最中の出来事が頭をフラッシュバックしてきたのだろう。まるで浮気が恋人にバレてしまったと言わんばかりの表情を僕に見せてくる。



いや、分かってるよ。だって僕目の前にいたし。というかなんなら負けじと君とイチャイチャしてたし。ヒナは知らないと思うけど。