第2章 それとも過ち
カーテンの開いたままの大きな窓から
月の灯りと庭のライトのもやだけが部屋を見渡すしるべ。
2人の間に会話らしい会話はなく、跡部はなにか少し焦り気味に私に唇を落としていく。逃げる訳ないのに。唇に鼻先に、頬に。それから
「……っ」
耳元に はぁ、と熱い温度が送られてくる。びくりと身体が勝手に反応する。
「色鳥……」
「ぁ……」
耳元で跡部が私を呼ぶ。いつもの、知り合った頃となんら変わらぬ呼び方で。ただ息遣いが違う、本当にこのまままだ知らない跡部を知る事になるんだ。そう実感した。跡部の腕に包まれながら、ゆっくりと身体をベットに軋ませる頃 跡部の熱い舌は私の首筋をなぞっていた。
そうか、こんな風に跡部は女の子を抱くんだ
そんな事を俯瞰で感じながら 送られてくる快楽に目を綴じる。
ねぇ、どうしてそんなに
優しく触れるの?
勝手に抱いてきた跡部のイメージと違いすぎて。そしてやっぱり私の脇腹をなぞる掌がもどかしさを感じる。わざと、なの?それとも。
何か言葉を交わせば 消えてしまいそうな
そんな緊張感の中 好きだ、という言葉を吐きそうになっては押し込める。
俺がこの気持ちに気付いたのは もう随分前の話で。だがその時は既に色鳥は奴に夢中だった。いや、むしろその姿を見るのが好きだった。いつも真っ直ぐに恋人を見つめ、それに彼奴も応えていて そこに俺様が入る余地なんてなく。もし無理にこちらを向かせたとしても、俺は色鳥を傷付ける自信しかなかった。
……それは今も同じか。
俺と彼奴は違いすぎる。
秘めた思いの強さが 今もまだ色鳥を壊してしまいそうで 出来るだけ丁寧に丁寧に…ふれる。
ずっと横目で見ていた欲しかったものが
今この腕の中で まっさらな姿になっていく。
さらけ出された色鳥の背中が想像よりも白く、それにため息をつきながらくちづけた。
「ふ……ぁ」
息を漏らすだけの色鳥。なぁ、どうしてだ?これまでもその手を掴み、見つめては。何度も迷っては手離した。例えあいつと別れても 俺とだけはないだろうと思っていたのに……
そんなにも 今のお前は
虚無の中ということか?
それとも きまぐれ――