第2章 無邪気な天使は悪魔な肉食獣
あ。
ランチタイム。
外にランチに出る同僚たちと一緒に乗り込んだエレベーター。
「雪乃さん、今夜行ってもいいですか?」
先に乗っていた小鳥遊くんが、みんなにバレないように耳打ちする。
さりげなく手を握ることも、忘れない。
「…………雪乃、大丈夫?」
「ほんとだ、顔ちょっと赤いです?」
「あ、あー、なんかこのエレベーター暑くない?人多いとやっぱ蒸すよねぇ」
あはは、なんて乾いた笑いしてるうちにエレベーターは玄関ロビーに到着。
素知らぬフリして。
小鳥遊くんが先に降りてった。
あれから。
彼の秘密を共有することになった、あの日から。
彼は毎週末、アパートにやってくる。
「ねぇ雪乃さん、今日は、どんな味?」
無邪気な表の顔したかわいい天使は。
あたしの前でだけ。
肉食獣な裏の顔、悪魔になる。