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朝凪のくちづけ【R18】

第1章 朝凪のくちづけ



目の前の海が雨降りのガラスみたいに滲む。

呆れたようなため息が聞こえ、後ろでタクマさんがごろりと横になる気配がした。



「……いいって言って…」


「オマエさあ、泣く位なら来んなって。 だれも強制してねえよ」



迷惑がられている、それ位は分かる。

勝手にこっちのペースで答えを要求して。


けれど私だって初恋から今まで片思いを通してきた。

段々とここに来れなくなる。
私はもう子供じゃない。

ここで引いたらもう、いつまで待てばいいのか分からない。

……これも私の身勝手だけど!


決死の覚悟で振り向いて、寝転んでいる彼の両端にざすんと手を付く。


「泣いてない!」


「……なに…? いきなり襲うな」



「襲いたいよ。もし、私が男だったら既成事実作るのに」



彼の口元から余裕そうな表情が消えて、滅多に動揺しないタクマさんが呆気に取られて私を見上げている。



「上手くやれる自信なんてないし…よく分かんない」

「やれるって……っ待て」


彼が着ているTシャツの裾から中に手を滑らせると、驚いたように手首を掴まれた。

そしたら当然私の力じゃそれを強行するのは無理なわけで。



「………っん、ぐぅ…」


「……とにかく落ち着け、綾乃。 それにオマエめちゃくちゃ泣い」

「泣い、て…ない」



ここまで来たらこうなったら。

彼のがダメなら私の服。
前開きのパーカーのファスナーを一気に下ろす。

恥ずかしいなんて、そんなの構ってられない。

ついでにブラのホックも外し………掛けるとまたその腕を掴まれる。


「……ッ離」

「こんなとこで脱ぐなって。 捕まるから」


「いい、別に」


「いや捕まんのはオレだから」


そんな風に言い合ってると腕を取られた時に爪で弾いてしまったのか。

背中の圧迫感がふと無くなってブラのホックが外れ、私が馬乗りになっている彼の目の前でぽろんと胸が揺れた。



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