第87章 ながい夢
キリ「どうしてなれないの?」
本当に不思議そうに首を傾げるキリに、こちらが反応に困ってしまう。
シカ「あーそりゃあヒーローっつったら……」
そう言って、シカマルは脳内にあるヒーロー像を思い描いていく。
シカ「まあまず強いだろ? それに、強ぇ上に努力家でいつも頑張っててよ」
更なる強さを求めるために、血反吐を吐きながら努力し続けるのだ。
キリ「……あなたは強いわ。あなたの家の秘伝忍術も本当に秀逸。それを使うあなたも頭の回転が早いから、私はあなたを敵にするのは避けたいわ」
シカ「そう言われんのは嬉しいけどよ。ヒーローはめんどくせぇなんて言わねぇからな」
面倒な修業も、つらい修業も弱音一つ吐かないで、頑張れるのがヒーローで。
間違ってもこんな風に、めんどくさいが口癖のやる気のない男ではない。
キリ「言わないわ」
シカ「?」
キリ「あなたは、そんな事は言わない」
真っ直ぐに告げるキリの言葉は、お世辞も嘘も何もない本心だった。
シカマルが面倒くさがりだという自覚は、自他共にあると思っている。それゆえにキリの反論に納得しかねていると、キリはゆっくりと説明してくれた。
キリ「ここ一番の時に、あなたは絶対に弱音は吐かない。苦手な事にも取り組んで、強くなる努力を惜しまない人」
シカ「あのな。それはキリが俺のこと過大評価してんだよ」
キリ「実際に、私は修業中に、あなたからもう嫌だ、もう無理だと、そんな言葉を一度も聞いた事はないわ」
今までシカマルを近くで見てきたから分かると、キリに言われて、シカマルも押し黙る。