第87章 ながい夢
どうして、自分はこんなにもキリが心配なのか。
どうして、自分はこんなにもキリが気になるのか。
シカマル自身、キリへの感情や思考を理解出来ていなかったが。
入院後ずっと面会謝絶だったキリに、ようやく会う事が出来た時、初めて恋を自覚した。
生まれて初めての感情に、どれほど戸惑ったことか。
干渉を酷く嫌ったキリ。いつかそれらを何でも聞く事が出来るのだろうかと思ったものだ。
チラリと、今隣へいるキリへ視線を向ければ、目を細めて返してくれる。
シカ「……一人で、無茶すんなよ」
キリ「急にどうしたの?」
シカ「何かあったら言ってくれ。これからは、俺がいるんだからよ」
キリ「……わかった」
気恥ずかしそうにされた返事は、もう干渉を嫌がるそれではない。
おそらくキリは何を言っても無茶をするだろうから、それはこちらが気にかけよう。今はきっと、聞けば答えてくれるのだから。
シカ「それによ、礼を言うのは俺の方だからな」
キリは何度も、手を貸してくれた。
関わる気がないと言いながら、いつだって。
シカ「キリには何回助けられたかわからねー」
知っているだろうか。苦手意識があった体術が、今では他人に引けを取らなくなったこと。
新たに土遁の術を使うようになったこと。
キリと出会ったことで得たそれは、今の、そしてこれからのシカマルの強い武器になるだろう。
知っているだろうか。人と関わらないキリが、誰かと関わる時、いつも誰かを助けるためだったこと。
子鹿を助けた時。雷影から仲間を守った時。体術を教えてくれた時。
シカク不在で初めて子鹿の薬を作った時。
そのどれもキリの優しさからくるものなのに、キリはきっと自分の優しさに気付いていないのだろう。