第20章 面倒見
その昔、キリは樹の里で主力となる他に、サポート役になることも多かった。
戦闘の第一線や個人戦ももちろんするが、どんな状況でも視野が狭まることがなく他者より広くあったため、自分でも周りを見ながらの共同戦の方が長けていたように思う。
当時は誰かと背中を合わせて戦うことも多かったが、今となってはそれは考えられないことだった。
キリ(これから、また誰かに背中を預けることなんて……)
もう二度とないように思えた。
シカク「シカマル! いつまで休んでんだ」
ぎくりと肩をすくませて、とっくに息が整っていたシカマルは渋々立ち上がる。
シカク「ったく、次は体術だ。シカマル、キリ。二人で手合わせをしてみろ」
「げっ」と比較的苦手とする体術にシカマルは苦い顔をするが「早くしろ」とシカクから急かされ、二人は向かい合った。
スッと刀を抜いたキリに、シカマルもクナイを構える。
シカク「はじめ!」
開始の合図と同時に、キリの刀が振られて、それをクナイで受け止める。
シカマル(重てぇっ……)
その細い体で、しかも完全に手を抜いているこの攻撃。一体どこからこの力が出てくるのか。
何度か攻撃を仕掛けられるが、防ぐのに精一杯で、とてもこちらから仕掛ける暇はなかった。
シカマル(くそっ、リーチが違いすぎる)
背丈の半分はあろう刀を使用するキリの間合いは広い。
リーチが長い分、攻撃時の速度が低下してもいいものだが、キリの剣先は容赦がなく、鋭く斬り込んで来る。
シカク(こりゃちっとシカマルには荷が重いな)
シカク「キリ、このままじゃ差があり過ぎて修行にならねー。刀は使わずにやってくれ」
キリ「はい」