• テキストサイズ

ささめごと -ながい夢- 【NARUTO】

第68章 雨傘






キリ「ごめんなさい、久しぶりだけど……雨も酷いから」

帰ると、告げたキリに、シカマルはハッとする。


傘を持たずに、ずぶ濡れになっているキリに気を回すことが出来ないほどには、自分は冷静さを失っているらしい。

かくいう自分も、せっかくヨシノが持たせてくれた傘をさすことも忘れ、ただ手に持っているだけとなり、身体には容赦なく雨が伝っている。


シカ「ん」

キリ「!」


一歩、二歩と近付いて、傘をキリの頭上へと傾けると。

目を丸くして、こちらを見るキリ。

シカマルは鼓動が早鐘のようになるのを感じながら、口を開いた。


シカ「あー……だから、一緒に入りゃいいんじゃねぇの」


キリ(……どうすればいいの)

シカマルの落ち着きのある優しい声が、キリの耳に届く。


言葉だけをみると、どちらかと言えばそっけないようなその物言いに、優しさしか感じられないのは自惚れなのだろうか。

そっと傘をさしてくれたシカマルと、距離が狭まり、ふわりと彼の匂いがした。


キリ(っ……)

先ほどから、本人を目の前にして胸が疼いてたまらない。

シカマルを愛おしく思う気持ちが、好きだと思う気持ちが溢れて、苦しい。


キリの頭上にある傘。

対してその持ち主は、傘の恩恵を得られずに、顔や体を濡らしていく。


キリ「……」


そうこうしている間にも、強まる雨はもうどしゃ降りの状態になっていた。




/ 1018ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp