第49章 父親
「キリが壊した道場を見せてもらえないか」と言えば、先導するヒアシの後に続いて、シカクは道場へと足を運んだ。
そして中に入ったシカクは、大きく損壊し、穴が空いている道場の床を見ながら言葉を落とした。
シカク「………これが、キリが壊した箇所か?」
ヒアシ「そうだ。あとあそこにある傷跡もな」
シカク「?」
壁を指差すヒアシの指先を辿って、シカクが壁際へと近付いていけば、そこには刃物が深く刺さっていた痕跡があった。
シカク「……これは、どういう経緯でこうなったのか聞いてもいいか?」
ヒアシにため息をひとつつかれてから、牽制ではあったが自分に向かって刀を投げ付けて来たのだと言われた瞬間。
今まで耐えてきたものが限界を突破した。
シカク「ぶはっ、くっくっくっ」
堪え切れずに声を出して笑うシカクは、どうにか抑えようと腹を押さえる。しかし、かなり力を込めて放ったのだろう奥深くまであるキリの刀傷の跡を見て、再び笑い声を上げる。
シカク「だっはっは! いやぁくくっ……悪かったな。キリも中々やりやがる。くくくっ」
シカク(キリもずいぶん感情豊かになったもんじゃねぇか)
はじめにキリが木ノ葉に来た頃に比べると、その変化は著しい。
シカク(いや……でもまあ、もともとそういう質はあったな)
そういえば、キリの担当上忍になってからまだそんなに経っていない頃の任務で、雷影相手に向かっていき、さらには雷影を煽っていたキリの姿を思い出す。
シカク(あの時はこっちがヒヤヒヤしたもんだが……思えばあれも、俺たちや木ノ葉が悪く言われてからだったか)
自分が攻撃された時には、まだキリは大人しくしていた。
シカク(いつだって他人のためにしか動かねぇ優しい子なのは変わりねぇ)