第43章 失敗
じっと無言の圧力をかけてくるシノと、伺うようにこちらを見つめているヒナタの二人の視線が刺さり、キバはがしがしと頭をかいた。
キバ「あーくそっ、わかったっての!!」
意を決して、キバは状況が分からずただ佇んでいたキリへずんずんと近づいていく。
キバ「キリ! 悪かった!!」
キリ「!」
突然の謝罪に、一体なんだと目をしばたたかせていれば、キバはバツの悪そうな顔を見せた。
キバ「あー今日、お前にずっと態度悪かったろーが。悪かったな」
キリ「!」
キバ「でもなぁ! お前も初対面ではあんな態度とってたのに、急に態度変えんなよな! こっちもどう対応すりゃいいかわかんねーっつの!」
キリ「ご……っ」
ごめんなさいと、言おうとする前に、バッとキバの手によって口を塞がれる。
キバ「あー!! 謝れって言ってるわけじゃねぇよ! もう謝んな!!」
シノ「そうだ、キリ。キバが悪い」
ヒナタ「キ、キバくん、それじゃキリちゃんが苦しそう」
ハッと手を離して「悪い!」と焦りを見せたキバに、キリは戸惑いを見せた。
キリ「でも……あれは私がーー」
キバ「いいっての! お前も謝ったし、俺も謝った。これでもうチャラってことでいいだろ」
アカデミーに来てすぐに、歩み寄ってきてくれたキバを、酷い言葉で突き放したキリ。
それをそんな一言で許してしまっていいのかと。困惑しながらキリがヒナタを見れば、ヒナタはにこりと優しく微笑んで頷き返してくれる。
キリ「あ……りがとう」
キバ「っ! おう」
にかっと歯を見せて笑ったキバに、ヒナタも嬉しそうに微笑んで、キリの胸の奥がじわりと温かみを感じた。