第42章 誤解の連鎖
しかしそうでなくとも、慣れていない人の前ではあがってしまって、上手く話すことが出来なくなってしまう。
これがよく人を苛つかせていることはヒナタ自身もよくわかっている。
それを懸念していれば、キリはそれも問題ないと言った。
「彼は、そんなことでは怒らない。きっと待ってくれるから、落ち着いて今みたいにゆっくり話してくれたらいい」と、そう告げられた。
それでも今日まで。やはりヒナタぬ心配はあった。
けれど今、目の前にいるシカマルからは、苛立つような素振りは全く見えない。
ふわりと力を抜いて、穏やかに。次の言葉を待ってくれている。それがキリの言っていた通りで、ヒナタの肩の力もつられて抜けた。
ヒナタ「その、アカデミーではシカマルくんがこんなに……」
修業を……と、言葉を濁したヒナタに、シカマルもその意味を理解する。
シカ「あー、俺がこんなに真面目にやるなんて思わなかったって?」
ヒナタ「ご、ごめんなさい……っ」
シカ「いや、実際そうだったしな」
アカデミーの頃は、修業なんてかったるいと、いかにして上手く手を抜くかに全力を注いでいた。
なので、ヒナタのその認識は何一つ間違ってはいない。
ヒナタ「で、でも! 今日のこの合同での修業も、シカマルくんの提案だって聞いて……!」
本当はすごく練習熱心な人なのだと思ったと、心なしかキラキラしたヒナタの眼差しがシカマルの胸に刺さること刺さること。
シカ「あー、いや……」
そうではない、なんて本当の理由など言い難くてて仕方ない。けれど、こんな風にヒナタに美化されたままでは、なにか騙しているようで居心地が悪い。
シカ「悪い、そうじゃねぇ」
ヒナタ「?」
きょとんとしているヒナタに、今度はシカマルの方が口ごもる。
シカ「キリが気になってついてきたっつーか、なんつーか……」