第35章 35話 重たい犠牲
しっかりと巻き付いた尻尾をキリが何とか外そうともがいていれば、もう一本の尻尾で両腕ごと押さえつけられて、身動き一つ取れなくなってしまった。
フミ「それに、あんたにあんなことをして、このままだとおじいさんに顔向け出来やしないよ」
「本当に……本当に悪かったね」と、悲しい笑顔を向けられた時。イタチが動きをみせて、キリは激しい焦燥感に駆られる。
キリ「待って、降ろしてお願い……!! フミさん!! 私はそんなこと気にしていません、だからっ」
フミ「頼んだよ」
キリの言葉を最後まで聞く前にそう言えば、長年、戦場を共に生きた相棒が駆けていく音が聞こえる。
遠くなっていくその音を背後に聞きながら、フミは暗部達に笑みを浮かべた。
フミ「利口だね。一歩でも動いてりゃただじゃ済まないのがわかったかい?」
『っ……!』
フミ「さあ来な。この私を…たばかった罪は重いよ」
………………………
風を切る音が、キリの耳に響く。
一体どれほどの速度で走っているのか。先ほどの場所から離れていくほどに、キリの焦燥は募る。
キリ「……お願い戻って!!」
いくら力を込めてもビクともしないイタチの拘束に、キリは奥歯を噛み締めた。
キリ「狙われていたのは私だけ……だからっ、戻ればフミさんは助かる……!!」