第90章 それぞれのご報告 ー猪鹿蝶編ー
いの(ほんと、キリには一途だったもんねぇ)
いのがキリには必要ないと思った手助けを、シカマルはやめなかったのだ。
キリのそばに居続けて、キリだけを追いかけていたシカマル。
それでキリは今、本当によく笑うようになっている。言動の全てが穏やかになった。
それは、シカマルに救われた部分があるからだろう。
あの頃いのの目からは、強く見えたキリも、本当は孤独だったのだ。笑顔を失うほどに、無理をしていたのだから。
にっと、満面の笑みを浮かべて、シカマルの肩を小突く。
いの「やるじゃない! シカマル」
頭はいいくせに、いくら言ってもやる気のなかった幼馴染が、いつからか必死になって修業に励むようになった。
それから、シカマルがどれほど強くなったのか。いのはそれを知っている。
キリと、シカマル。
この二人はきっと、一緒に居た方が強くなるのだろう。
若年寄りな幼馴染には、他の追随を許さないほど大人びているキリがお似合いだ。
いの「あんた達、お似合いだと思うわよ」
チョウ「僕もそう思う」
それに対してシカマルは「そうか?」と、平静を装っていたが。その頬は紅潮しており、まるで照れを隠せていなかった。
そんな幼馴染の姿に、堪らずいのとチョウジは顔を合わせて笑い声を上げる。
その後アスマが来るまで、シカマルはいのから質問攻めに……いや、それどころかアスマが合流してからも、根掘り葉掘りキリとのことを聞かれた。
今日の修行は中止になり、祝賀会だと急遽焼肉になった時、1番喜んでいたのはチョウジだったかもしれない。
この日の焼肉が、みんないつもより笑顔が多い気がしたのは、きっと気のせいではないだろう。
ながい夢 番外編 -Fin-