第89章 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
第89話 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
『拝啓 イチカ様
冬を越えて、日差しが暖かい季節になりましたね。
イチカは元気にしていますか。
季節の変わり目に、また風邪を引いていませんか。
私は、元気です。
ナガレさんとも、いずれ話をする事になりました。
今はまだ…どんな気持ちで話していいのか、どんな顔でナガレさんに会えばいいのかわからないので、会うのは少し先になりそうです。
そしてその節は、イチカ、みんな。
本当にありがとう。来てくれて、嬉しかったです。
イチカも、大変だったでしょう。
色んな気持ちがあったでしょう。
私にもあります。どうやってこのやり場がなくて、信じられない気持ちを抑えればいいのか、わかりません。
完全に気持ちの整理をつけるには、どれだけの時間が必要なのでしょうか。
またイチカと、ゆっくり話がしたいです。
今度、木ノ葉隠れの里に来た時は、きちんとおもてなしをさせて下さい。
イチカが来てくれた一度目も、二度目も、何もおもてなしが出来ず、申し訳なく思っています。
木ノ葉隠れの友人に、美味しい甘味屋さんや、良い修業場所を教えて貰ったので、今度は一緒に行きましょう。
その時には友人も紹介させて下さい。
ヒナタといって、とても心根が優しくて、それでいて芯の強い女の子です。
体術が得意な子なので、一緒に修業するのも素敵ですね。
そして、もう一つ。
イチカに伝えたい事があります。
イチカも何度か会った事がある奈良シカマル、彼とこの度お付き合いをする事になりました。
それでは、また。
次にイチカと会える日を楽しみにしています。
キリ』
キリは、くるくると文書を巻いて、濃い青色の紐で結ぶ。
キリ「……いい香り」
手紙を結んだ紐は、ふわりと花の香りがする。
イチカに手紙を書くと言ったら、ヨシノがこれを使うといいと、渡してくれた。ヨシノの心遣いに、キリは小さく目を細める。
キリ「樹の里まで、よろしくね」
シカクが口寄せしてくれた伝達用の黒鳥に、手紙をくくりつける。
黒鳥は得意げにひと鳴きすると、 キリの部屋の窓から、飛び立った。