第6章 強くなるために
名前の屋敷と蝶屋敷は思っていたより近くにあった。
今日の仕事を終えた名前はしのぶに言われたように蝶屋敷へと赴いた。
昼過ぎにはしのぶは先に蝶屋敷に帰って行ったが、結局蝶屋敷に来たのは夕方だった。
しのぶもその時には留守にしているそうで、玄関ではきよ、すみ、なほが出迎えてくれた。
「名前さん!」
「なほちゃん!違うよ天柱さまだよ!」
「あ……そうだった!天柱さま!こんにちは!」
『こんにちは。いいよ名前で。炭治郎はいるかな』
柱として呼ばれる事にも慣れては来たが、少々むず痒い時もある。
「炭治郎さんなら機能回復訓練中です。そろそろ終わって病室に戻られる頃かと思います」
『ありがとう、少しお邪魔させてもらうよ』
「炭治郎さんに手ぬぐいを渡しに行くのですが、御一緒しませんか?」
「しませんか?」
きよ、すみ、なほは名前を少し不安そうな顔で見上げていた。
『いいけど……どうしたの、なにかある?』
不安そうな顔を悟った名前が聞くとなほが言う。
「炭治郎さんは全集中の常中が出来ていないみたいなんです……」
『ああ、そういう事か……』
少し考えて納得する。
名前自身は鬼殺隊に入る前には全集中の常中を父に習い習得していたため忘れていたが、鬼殺隊の下の階級の者たちは基本的に常中はできない人が多い。
しかし強い鬼と戦うには絶対に必要になってくる技だ。
すると廊下の向こうから炭治郎が歩いてきた。
何か考え事をしているのか炭治郎は名前達に気づかない。
心配に思ったのか三人娘が炭治郎に駆け寄る。
「炭治郎さん」
「炭治郎さん、あのう」
声をかけられて初めて炭治郎が周りに居る名前達に気づいた。
「わっ、びっくりした、どうしたの……って、名前さん!?」
『元気そうで良かった』
「あ、ありがとうございます!……あっ、柱就任、おめでとうございます!!!……で、みんなは何故ここに?」
「て、手ぬぐいを……」
「ありがとう!優しいね!」
炭治郎は慌てて名前に挨拶をしながら三人娘から手ぬぐいを受け取った。
さらに三人娘は炭治郎に聞く。
「炭治郎さんは全集中の呼吸を四六時中やっておられますか?」