第6章 強くなるために
「天柱、これは担当区の地図と現在の担当区で任務をしている人数と状況です」
「苗字様、定期連絡は毎朝鴉に報告をお願いします」
「隊士名簿はここに置いておきますね」
「天柱、この書類には明日までに目を通してください、それと……」
柱になって一ヶ月が立った。
当初は昇格の会議が早まったのもあり、産屋敷家側の準備が出来るまでしばらく甲時代と同じように任務をこなしていた。
準備が整うと、柱としての仕事が入るようになっていった。
名前は自宅をそのまま柱としての屋敷にするため、隠の人達が必要な書類や書物などを自宅へと運んでくれた。
しかしその量に名前は少しばかり驚き、書類の山の中で目尻を震わせながら目を細めていた。
柱になるまでは良かった。
覚悟もあった。
甲の時もそれなりに事務作業はあったが、柱ともなると情報量が段違いで増えた。
……まさかこんなに事務作業が多いとは思ってはいなかったのが唯一の誤算だ。
「あら、剣の腕は一流の名前様も事務仕事は苦手みたいですね」
女中であるサナエがその様子をからかうように見ながら名前の机にお茶を置いた。
『しのぶさんは慣れれば大丈夫と言っていたけど、少し多いな……』
肩を竦めながらため息をつく名前にサナエは微笑んだ。
……
「捗っていますか?」
数刻後。
あらかたの書類の整理をし、自分の下についた隊士達にも指示が終わったあたりで来客があった。
サナエが名前の部屋に案内したのは胡蝶しのぶだった。
『しのぶさん、こんにちは。やっと部屋が片付いた所です』
「そうでしたか。手伝ってあげようかと思いましたが大丈夫そうですね」
『お気遣い感謝します』
サナエがしのぶにお茶を出す。
しのぶはサナエにお礼を言うと一口お茶を飲むと口を開いた。
「そういえば、今蝶屋敷に竈門炭治郎くんが入院してまして」
『ああ、那田蜘蛛山で結構な怪我をしていましたね』
柱合会議の時の状態を考えると怪我はだいぶ治り、鍛錬を開始しても良い頃だろうと推測した。
するとしのぶは続けた。
「竈門くんに、日の呼吸について聞かれましてね。竈門くんがなぜ日の呼吸を知っているのか分からないのですが、名前さん、教えてあげて欲しいなと」