第3章 もう一つの呼吸
『そうか、元十二鬼月の鬼だったか』
「はい、本当に十二鬼月だったら、多分俺だけじゃ倒せませんでした」
食い荒らされた人達を屋敷の外まで運ぶ際、名前は炭治郎にこの屋敷に居た鬼はどんな鬼だっかを聞いた。
実際に居た鬼はこの屋敷に「元」十二鬼月と二体の鬼だけだった。
被害は出てしまったが癸である炭治郎達が倒せてしまう程の鬼しか居なかった。
少しばかり疑問は残るが、今は目の前の事を処理するのが先だ。
外に出ると善逸と少年達が埋葬用の穴を掘り終わった所だった。
少年達を石拾いに行かせている間に遺体を穴に埋める。
「あの……名前さんはなんでこんな所に……?任務ですか……?」
偶然居合わせるはずが無いと善逸が聞く。
『この辺りに十二鬼月が居ると聞いて来たんだけど……居なかったみたいだ』
名前は苦笑いをしてみせる。
完全に居ないとは言いきれないとは言わなかったが、善逸は納得したように作業に戻った。
埋葬が終わりに近づく頃、伊之助が起きてきた。
起きて早々、炭治郎や善逸に喧嘩を吹っかけに行っていたが、炭治郎の巧みな話術により最終的には伊之助も埋葬を手伝ってくれた。
「はぁ!!なんだテメェは!!!どっから来た!!」
伊之助はいつの間にか皆へ指示を出す名前を見つけると声を荒らげた。
「この方は苗字名前さん!!先輩だぞ何だその言い方は!」
「知らねぇな!!強いのか!?強いなら勝負しろっ!!」
「だからなんでそうなるんだよっ!!」
暴走する伊之助を善逸が何とかなだめている中、名前は苦笑いをしながら隊服に着いた土を払って立ち上がる。
『さ、日が暮れる前に少年達を家に帰さないといけないから山を降りようか』
名前が言うと少年達は少し焦ったように(名前)に言う。
「あの……!俺達は自分で帰れます……!ありがとうございます」
『そうか、気をつけて帰るんだよ』
少年達は家は山を降りればさほど遠くないといい、まだ日も陰っていないので名前は気をつけながら帰らせる事にした。
『さて、皆怪我をしてるみたいだし、一旦俺達も山を降りよう』
名前は少年達が帰った事を確認すると、三人を連れて山を降り始めた。