第2章 結婚は、、、
今日もいい天気だ。悲鳴嶼と鈴音は、河原の木陰で猫を撫でていた。もう何度目になるだろうか。あれ以来、悲鳴嶼はよくここに来てくれるようになった。
他愛のない話しの中で、鈴音が20歳になったことを聞いた。
「、、、失礼を承知で聞くが、結婚はしていないのか?」
「あら、それ聞いちゃいます?」
鈴音が悪戯っぽく笑う。
「、、、悲鳴嶼さんは、鬼狩り様ですよね?」
「、、、いかにも。」
別に隠していた訳ではない。隊服で集落を通ることもあった。
「私、昔、鬼に襲われたんです。」
いつも元気な鈴音の声が、少し低くなる。
「両親は殺されました。私は、命は助かりましたが、背中に大きな傷をつけられました。」
危うく殺されるところで、鬼殺隊の誰かに助けられたようだ。
「この傷跡を皆さん気味悪がって、貰い手がないんです。」
あ、もちろんお相手には事故の傷跡だと話しましたよ、と鈴音は少し悲しそうに笑った。
「数年前まで祖父母と暮らしていました。二人共亡くなって、今は一人です。」
「、、、一人は何かと不便だろう。何かあれば遠慮なく言いなさい。」
悲鳴嶼は、またぽんぽんと鈴音の頭を撫でた。
「もう、悲鳴嶼さん。もう私はハタチなんです、ってば。」
「そうか、それはすまない。」
悲鳴嶼は微笑んだ。鈴音は鈴のようだし、猫のようでもある。
「、、、聞いて下さってありがとうございました。
誰かに話したくても、鬼なんてみんな信じないから、、、」
「、、、そろそろ行かねば。何かあれば言いなさい。」
怒られそうだが、また鈴音の頭をぽんぽん撫でると、悲鳴嶼はそこから立ち去った。