第12章 戦
【戻りたくてもここにはもう戻れない】
この言葉に胸が抉られる日が来るとは思ってなかった。
戻りたいと思う日が来るもしれない…?
ついさっき、蕩けそうなキスをした人を思い出して後悔する日がするかもしれない…?
「伽耶さん?」
「あ、ううん、何でもない。三ヶ月もいるとやっぱり思い出もあるからちょっと寂しいなって思っただけ」
「そうだな。俺にもずっ友と呼べる友もいる」
(そうだよね。佐助君なんて四年もいるんだからもっとだよね)
「そっか…佐助君も寂しくなるね」
別れはいつか来るもの。
それが恋ならその儚さを自分が一番知ってる。
「うん、私は自分のいた時代に戻りたい。後悔はないよ。今の気分はそうだな…海外留学して日本に帰る時みたいな感じ? I'm gonna miss you.ってね」
「海外留学か…。君は俺が思ってた以上にこの戦国ライフを楽しんでるんだな」
「え?」
「いや、I'm gonna miss you. って、寂しくなるって思う人ができるほどにはこの戦国を楽しんでるんだなって思って」
「…うん、そうだね。自分でもビックリだけど、色んな人に出会って良くしてもらって、すごく良い経験になったよ。もちろん、佐助君がいたから不安にならずに過ごせたってのが一番大きいけどね。本当にありがとう」
「どういたしまして」
そうだよ。期間限定だからこそ乗り越えられたし楽しめたんだ。
だから、この胸の痛みなんてきっとすぐ治まる。
元々住む時代が違うのに好きになってしまって、そんな時もあったなって、きっと思える。
「これにてドロン」と佐助君が去って行った後も、お城の中に戻る気にはなれなかった。
あんなに火照っていた顔も体も嘘のように冷めきって、もう何も考えたくなくて…
「この時代は星も綺麗なんだ」
流れ星に叶わない願いを心の中で唱えながら、夜空をずっと眺め続けた。