第10章 喪失
4人が車に乗り、走り出した車体を遠くから眺める姿がもう一つ。
「ーーーへぇ。転入生が入ったって噂を耳にしたけど、まさかあの子だったとはね。」
切長の目をスッと細めて笑う男の後ろで、大きな鳥の姿をした呪霊の口からひょこっと女の子が2人、顔を覗かせた。
「ねー夏油様ぁ、こんな山奥何もナイじゃーん、寺ばっかりぃ〜。」
「菜々子、少し黙って。夏油様、今の子知り合いなんですか?」
「フフッ、前に一度ね?乙骨憂太といい、彼女といい、何だか面白くなってきたね。」
「夏油様何だか楽しそ〜。」
「そう見えるかい?
それと、すまないが今日は少し予定を変更させてもらうよ?」
「ええ〜!竹下通りでクレープ食べるって言ってたじゃないですかぁ〜!」
「菜々子、我儘言わないの。夏油様を困らせないで。」
「美々子だって楽しみにしてたくせに!すぐ良い子ぶるんだからっ!」
「この埋め合わせは必ずするよ。君たちは先に帰っててくれるかな?」
「はーーい」「はい。」
バサッと鳥が翼を広げ、空に飛び立つ。
「さて、あの時の返事を聞かせてもらおうか。」