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呪術廻戦  〜生きた証 前編 〜

第17章 揺れる。



・・・違う。

そもそも、ここにいる時点で私は皆んなを既に裏切ってる…。



それに重ねられたこの手を、今の私は振り解けない。
数ヶ月間、夏油さんの優しさに触れ、彼のお陰で私は命を繋いだ…

謂わば恩人。


ぐるぐると頭の中で思考を巡らせていると、


「フッ、眉間にシワが寄ってる。」

『・・あ、、、』


重ねていた手が離れると、私の眉間を長い指がスッと撫でた。


「すまない、無理強いするつもりはないんだ。
そもそも此処に好きなだけ居たらいい、と言ったのは私だからね。」


自嘲気味な笑みを浮かべ立ち上がろうとする夏油さんの腕を、私は咄嗟に掴んだ。


驚いた様子の夏油さんにずっと気になっていた事を問う。



『ーーー何故、私に良くしてくれるんですか?』


いつも飄々としている夏油さんの目が僅かに揺れた。



「ーーーー何故、、か。
何故かな…。
君を見てると昔の自分を思い出すんだ。
当時、私は弱者は強者が守るものだと思っていた。
・・けれど徐々に私の中で価値が揺らいだ。
呪術師という生き方に希望が見いだせなくなっていたんだ。
ーーー悩み、葛藤し、孤独を感じていたあの頃の自分と今のが重なって見えるんだ。
ーーーだからつい、手を差し伸べてしまいたくなる。」



『・・昔の自分、、それってもしかして、、』


「あぁ。私は悟や硝子と同級生だったんだ。
悟は私の、、、いや、、何でもない。」


夏油さんは目を伏せ首を振った。
その表情は昏く、切なげに見える。



「ふっ、柄にもなく感傷的になってしまった。
ひとまず今日は戻るとするよ、また近いうち話をしよう。」



立ち上がり背を向けた夏油さんに、



『あのっ、、、私、一緒に行きます…。』



気付いたらそう口にしていた。


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