第12章 幻覚か現実か。
カシャンッ
刀で弾いたナイフが音を立て地面に落ちた。
さんの冷えきった瞳が僕を映す。
「・・・さん、それ以上はダメだよ…。」
『聞いてたろ?こいつらは死んで当然だ。』
「確かに…最低最悪な連中だ。
こんな事は絶対に許せる事じゃない。
だけど、さんがその人を殺しちゃ、だめだよ。」
少しの沈黙の後。
『ーーーーーじゃあ私を殺せよ。』
「え・・・」
さんは気怠げに男の上から降りると、今度はその男の首元を締め上げた。
「ぐへっ、、」
『ほら、早く私を殺せよ?じゃないとコイツ死ぬよ?
私かコイツか、お前はどっちを生かすんだよ?』
ギリ、ギリッと指が男の首に食い込んでいき、男の顔はみるみる赤紫色に変色していく、、、
これ以上は、、ダメだ、、、
「狗巻君っ‼︎」
「ーーー眠れーーー」
さんは一瞬目を見開くも、男の首を締めていた手からは力が抜け、身体はぐらりと傾いた。
彼女が地面に頭を打たないよう、咄嗟に身体を抱きとめると、真希さんと狗巻君から安堵のため息が聞こえた。
「はぁ〜〜、マジ心臓に悪いわ。
つーか別人格とは聞いてたけど、こんなにやべー奴だったのかよ!」
「・・・・ごん"ぶ、、」
「うわっ!狗巻君、喉大丈夫⁇」
「だがな"、、、」
ガラガラ声の狗巻君は喉を押さえながら大丈夫だ、と言うように片手をあげた。
「とりあえず学校に連絡しねーとな…。」
「そうだね…。さんもいつ目覚めるか分からないし、、、って、、え?これ、、、」
「どうした?」
さんのシャツが血に染まっていたのは分かっていたけど、てっきり男の返り血だとばかり思っていた。
けれどシャツのお腹辺りに穴が空いていて明らかにそこから大量の血を流したんだと分かった瞬間、サッと血の気が引いた。
どうして早く気づかなかったんだろう…‼︎
霊安室の血溜まりがさんの血だとしたら、血を流し過ぎてる…
ーーーードクドクと心臓が早鐘を打つ。
そっと彼女を床に寝かせ、傷を確認しようとシャツを捲った。
「ーーーおい、、これって…」
「・・・・。」
「ーーー反転術式。』
刺し傷は既に塞がっていた。