第3章 【ちぇりーぱい_マス編】
「良かったら、試食して戴けませんか?」
フォークで一口大にカットし、口に運ぶ。
マスターが作っていたチェリーパイより甘さが強くて、オレはちょっと苦手だ。
紅茶の味も、何だか薄い気がする。
”やっぱ、時代と共に変わっちゃうんだなぁ…。”
心で呟くと、正直に苦笑して見せた。
「あの味、よく覚えてるんですけど、再現出来ないんですよ。」
カウンターの向こうで悲しそうに微笑む女性。
改めて注文したコーヒーは、マスターのよりも苦味が強くてオレ好みだ。
「これはこれで好きな人もいるでしょうし、いいんじゃないんですか?」
そう言うと、彼女は力なく首を振った。
「これだけは、変えたくないんです。」
寂しげに微笑む笑顔に釘付けになる。
遠くを見つめる目が、何だか懐かしく思えた。
「私が初恋相手と一緒に食べた、大切な思い出なんで。」
ふふふ、と笑った顔にピンとくる。
そうだ、この顔。
どうして今まで気付かなかったんだろう?
「…?!」