第14章 幾度目の感情
「何時もみたいに真剣な遊びじゃダメなんでしょう、その子。だったらちゃんと」
「けどさ、今までイイ関係だったのに突然そう言う風に見られちゃうとさ。お店に来る女のこの態度とかもあるし…」
その先を聞きたくなかった。
言葉をさえぎって言い訳をする。
警鐘が頭の中で鳴り出す。
だけど彼女は容赦なく、此方を見下して言葉を吐く
「ホント今のアナタは女々しいわね。こう言う時どうすれば良いか判ってるのにこうやって私に聞かないと不安でしょうがないんでしょう?」
嗚呼、そうか。無意識に僕は後押しを欲しがってたのか。
この神獣(僕)が恋煩いだなんてチャンチャラ可笑しいと思ってた、けど今自覚したよ。僕の方こそ恋に落ちてた
コレだから妲己ちゃん(彼女)のは敵わない。
床に座りなおして俯く
「・・・・・うん、そうだよ、僕は怖がってる。」
その言葉に彼女が側に座る気配を感じるけどそのまま一人話し続ける
「物思いに耽る時間が増えているのも知っているし、お店に来てる常連さんの背中を見送る目が変わってきてる事にも気付いてる。」
言ってる内に恥ずかしくなってきて両腕で囲う様に顔を隠す
「でも気付かせちゃイケないってずっと思ってた。野干(石榴ちゃん)と白澤(僕)じゃ、いつか時の流れが合わなくなってくる。」
残酷なほどに現実は非常だ。
仮に彼女が長生きだったとしても一万年後に生きてる保証はどこにもない。
僕は死ぬ事はないのに、彼女は消えてしまう。
「そうね、ヒトとアヤカシも同じ…私と紂王様もそうだったワ。」
そう言って妲己ちゃんも窓の外、憂いを含んだ視線を宵闇の先に送る
この感情を理解してる彼女だからこそこうやって腹の底まで吐き出せる
けど彼女はくるりと振り返り先程の気配なんか微塵も感じさせない艶やかな笑みを浮かべて
「けど、この思い出は何物にも代えられない。私は彼を愛した事に後悔なんて一つもないわ。」
自信を持って話すその姿が眩しくて僕は目を閉じた
今更なんでこんなに憶病なんだろう
もう、認めてるじゃないか
僕は彼女を、石榴ちゃんを、愛してる。