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【鬼灯の冷徹】君という花【R15】

第14章 幾度目の感情


恋の訪れ、そんな状態の女の子をこれまでどれだけ見てきただろう。
その対象はほとんど僕ではなかったけれど。
共に働く彼女は今、その眼つきで僕を見つめる。

「薬出来上がりました、白澤様。出来の方を見ていただけますか?」
「ああ・・・・・うん、良い出来だよ。この薬はもう問題なく作れるみたいだから今後は石榴ちゃんが作る様にして貰おうかな。」
「良いんですか?はい、頑張って作ります!」

何時もと同じお店用の言葉使いに営業スマイル、最初に取りきめた約束と同じ態度
だけど褒めてあげたりすると目を細めて嬉しそうに笑う
きっと他の奴なら分からないくらい小さな違い、それに気付ける位長く一緒に済んだんだな。そう自覚して嘲笑する

「どうかしましたか?やけに楽しそうですね。」
「そうだね、今日はこの後『予定』があるからね。」
「…お酒はほどほどにして置いて下さいね。お帰りは明日になりますか?」
「そうだね。薬も作り終わったし今日はそろそろ店仕舞いにするから。」

他のヒトの匂いをさせればほんの少し顔を歪めてから直し、何時も通りの言葉を返してくる
あくまで『約束』は守るみたい・・・もしかしてまだ無自覚?
それならこのまま押し通そう。

「明日は一応お店は閉めとく予定だけど引き取りのお客さんとがいたらお渡ししておいて。あ、石榴ちゃんが扱える薬のお客さんが来た時も対応していいよ。」
「・・・お客様にお薬お渡しする時にお話しするのが好きじゃなかったっけ?」
「んー、たまには。ね?石榴ちゃんもだいぶ慣れてきたから色々な経験積んで欲しいしね。」
「わかりました。一応困った時は電話しますね。」
「じゃ、そろそろ行くから…戸締りお願いね。」

ああ、聡い子だからそうやって何時もと違う行動を指摘してくる
だけどまだまだだね。言葉遣いが素に戻ってる
もっともらしい理由を並べたてて、ワザと助手(君)の立場を自覚させる
気付かせないまま終わらせてしまえばいい

「はい、また明日。行ってらっしゃいませ。」

この恋の花は蕾のままこの手で摘んでしまうから。
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