第13章 芽生え
「ねぇ、重いんだけど。」
「別にいいでしょう?僕らの他にお客さんにないんだし。」
ニコニコと笑いながら私の肩に自らの顎を乗せて手元の作業を覗き込む
この店の店主は近頃暇だと判ってる日も店を開ける等何かおかしい。
そしてやたらと触れてくる
「…ちゃんと煎じ方見ていてくれるなら、良いけどさ。」
そしてそれに対してドギマギしている自分が、もっとおかしい。
昼時
密接したまま何とか仕上げた薬を棚にしまってから休憩にする。
今日の昼食の当番はアタシなので冷蔵庫を開けて中身を確認する。…適当に庭から野菜を取ってきて炒めて汁物と一緒に食べよう、そう考えていれば後ろからギュッと抱きしめられた
「今日のお昼は何かな?ま、僕としては午後の仕事放り出して石榴ちゃんの事食べたいんだけどね。」
項で束ねた髪に顔を埋めながらささやく声に全身がギュっと強張る
「アタシ料理に使う野菜取ってくるね!」
そう言って半ば強引に体を離して部屋から出ていく。お店を抜けて外へと出る、うさぎ従業員さん達が不思議そうな眼でこちらを見上げてくる。
「大丈夫だよ、ケンカとかしてないから。」
そう言いながら畑へと進む。青菜を摘んで、根菜を掘り返す。そうやって作業をしていれば自分の手が目に入った
最近めっきり逞しくなったアタシの腕。
友達にも「やだー、石榴って尽くす系なの?」とか聞かれて、前だったら軽口返せたのにその時は何も言えなかった(代わりに発言者の頭は引っ叩いといたけど)
アタシはどうしてしまったんだろう。
なんか変だ、と最近毎日の様に思い悩んでいた、この感情はなんなんだろって
俯き考えていれば急に顎を持ち上げられそんな思考をかき消すような甘い口付けが降ってきた
歯の隙間をこじ開けて奥の舌を絡め取って吸いついて
驚いて目を見開くも相手の長い睫毛しか見えなくて、嬉しいのに怖くて何度も瞬きした
そうやってしばらく唇を堪能した後体を離して彼は言った
「待ちくたびれちゃったから味見に来たよ。さ早くご飯作ってよ?」
その声に、表情に、感情が爆発した
訳も分からす彼の体を強く押す。彼が驚いた顔で転ぶも構わず叫んだ
「私に触らないで!!」
そのまま背を向けて走って倉庫に駆けこんで鍵を閉めた。
そのままラジオを片手に布団を頭からかぶってアタシは耳を両手で塞ぎ目をキツク瞑った
