第1章 種はまかれた
「…ごちそうさま。このジャスミン茶すごく良い香りで美味しかった。ありがとう。」
「そうかい、気に入って貰えて嬉しいな。」
あの後彼の家に招かれて軽く雑談をしながら推測するところに彼はこの家に一人暮らし、薬師を生業にして生計を立てているようだが話し方や雰囲気から体も軽いし女好きのようだ。てかさっきからストレートに「どう?」って聞かれてるし。
コレは行けるかも、もう少し情報を引き出したら落としにかかろうが…そう思ったときに彼が笑いながらサラっとした調子で
「実は僕、今住み込みで働いてくれる助手を探してるんだ。急な話だけど、キミは薬草とかに興味ある?」
あっさりと宿泊要請がきました。しかも仕事付きとは優良物件。これは押さえるしかありません。
「え、私でいいの?何の知識もないし力仕事はできませんよ?」
少しうろたえた振りをしながらもやる気さある様子を見せれば白澤は笑顔で私の両手を包み込むように握り
「大丈夫だよ。手取り足取り…腰取り教えてあげるから!」
その言葉に彼に見えないようにほくそ笑んでから触れる手のひらを握り返して
「本当にありがとう。じゃあ暫く仕事を覚えるくらいまでお世話になるわ。宜しくね、白澤様。」
「別に白澤様とか、言わなくて良いからね。」
その言葉にアタシは態度を一変、フレンドリーな感じにする。このまま肩肘張るより普段通りのアタシを見てもらった方が手っ取り早いしね。
「そう?じゃあ白澤、って呼ばせてもらうね。これから宜しく!」
こうして好々爺とアタシの騒がしくも愉快な日々が始まったのでした。