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【鬼灯の冷徹】君という花【R15】

第1章 種はまかれた


その日私は行く当てをなくして、文字通り当て通りなくさまよい歩いていた。
「なにが『大事な女(ひと)ができた』よ。今まで散々遊んであげたのにホント白状者!」
真っ赤な唇を明け渡す代わりに与えられていた寝場所を急になくした私は、心底イライラしていた。
こんな簡単に捨てられるなら別の男にしておけば良かった、そう思いながら進めばいつの間にか桃源郷に迷い込んでいた。
香しい桃の香りに引かれて木の下に歩み寄り辺りを見渡して人気がないことを確認してから一つ実を採り芝生の上に腰掛けてから
「あーあ、歩き続けたらお腹空いちゃった…ごめんなさい、ひとつ頂きまーす。」
わざとらしく謝ってから一口頬張ろうとすれば
「どうぞ綺麗なお嬢さん、好きなだけ召し上がれ。そのかわり僕は君のこと食べたいかな。」
といった声と共に柔和な表情を携えた男性が桃の林の奥から現れてきた。
思わず桃を持つ手が止まるもその人は気にせず背負った籠に熟れさた桃を入れていく。潰れないように丁寧にしまう様子を見ながら思い出したように桃をかじる。優しい甘さが口いっぱいに広がる
「どう、美味しい?僕が愛情込めて育ててるからね。」
「美味しいよ…。所であなた怒らないのね、私泥棒するところだったのよ。」
そう言って牽制すれば更に2個目の桃を差し出しながら笑顔でこう行ってきた。
「かまわないさ。桃はいくらでも作れるけど、女の子の笑顔はなかなか見られないからね。何なら僕の家にくるかい?まだまだ美味しい果物が沢山あるけど。」
そうやってさらりと口説く時にパチっとウインクしてくる。息を吐くように愛をささやく相手を見かねていれば、ゆっくりと此方によって来て
「そう言えば挨拶が遅れたね
僕は白澤。吉兆の印となる神獣さ、でキミの名前は何かな?」
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