第12章 下手な嘘
エマはエルヴィンに渡された
ハンカチで顔を拭くと、
厨房の裏口を抜けリヴァイの部屋へ急ぐ。
まだ、冷静に、と言う訳にはいかないが
今の自分の気持ちを、
早くリヴァイに伝えたかった。
リヴァイはまだ悲しい顔を
しているのかも知れない。
自分のせいで深く傷ついたかも知れない。
いつも感情を隠すように、
無表情でいるリヴァイが
自分には感情を見せてくれているのは、
自分を特別に想ってくれているという
証拠なのに……
まるでそれを蔑ろにしたような
行動を取ってしまったことを深く後悔する。
その気持ちは足に伝わり、
走ってリヴァイの部屋に辿り着いた。
エマはリヴァイの部屋のドアを
乱暴にノックする。
「おい、誰だ?
ノックはもっと静かにするもんだろ。」
リヴァイがドアを開け
そう言い終わる前に、
エマはリヴァイに勢いよく抱き着いた。
リヴァイはいきなりの衝撃に思わず尻餅をつく。
「……俺は確か、今晩来いと言ったはずだが?」
眉間に皺を寄せたリヴァイは、
そう言いながら、エマの肩に触れた。