第10章 信用させて
「エマさんと恋人に戻って
浮かれてんのかも知んないけど。
兵長が訓練に遅れるなんて、
今までなかったからな。」
ジャンはそう言いながら
横目でエマを見た。
「なんか俺、まずいこと言った……?」
エマの辛辣な表情に、ジャンは戸惑う。
「いや。ありがとう。
何か色々確信した。」
エマは呆れたような表情で笑うと、
歩調を速めた。
「え、リヴァイ兵長とうまくいってないの?」
ジャンはエマに歩調を合わせ、早足になる。
「……私の口からは言えない。
一応ジャンにとってリヴァイさんは
直属の上司な訳だしさ。」
「なに、そんな言えない話なの?」
「ごめん……
でもそこまで重大な話じゃないから大丈夫!」
エマはジャンの肩を
軽く叩いて笑って見せると
「重大じゃないなら
そんな辛そうな顔で笑うなよ。」
ジャンはエマの頬にそっと手を当てる。
「……もし泣きたくなったら、
胸くらい貸すから。」
「……ありがとう。」
エマはそう言うと、
自分の頬に当てられたジャンの手を握った。