第54章 想い出の地
「何でここのホテルの空室あるって
分かったんですか?」
エマは訝しげな表情で
エルヴィンを見る。
「君の顔を見ていたら分かるよ。
君は本当に嘘が下手だな。」
エルヴィンは肩を震わせて笑う。
二人が辿り着いた宿は、前回同様、
かなり老朽化した宿の一室だった。
「……それにしても、
また同じ部屋が空いてるっていうのは、
どうなんでしょうね……」
エマはそう言いながら
不審な目で部屋を見渡す。
エルヴィンは後ろから
そっとエマの肩に手を置くと、
「……君には見えないのか?」
そうエマの耳元でそっと言った。
思わず身体をビクつかせ、
目を丸くしてエルヴィンを振り返るエマに
「君はこういうのも苦手なのか?」
と、エルヴィンは悪びれる様子もなく言う。
「……この状況でそんなこと言われて、
気が動転しない人の方が少数派ですよ……」
エマはエルヴィンから少し離れた。