第53章 花言葉
「きっと君は昔から、
我慢ばかりしてきた子だったんだろう。
今、そうやって泣けるのは
やっと自分を出せている証拠だよ。」
エルヴィンの声は優しく、
エマの目には
再び涙が込み上げてくる。
「今回の涙は私が原因だろうから
申し訳なく思うが、
君が涙を我慢する必要は、もうどこにもない。
自分の感情に素直になるのはいいことだよ。」
エマはエルヴィンの服の裾を掴むと、
「……ほんと、相変わらず
エルヴィンさんは優しいですね。」
そう言って少し笑った。
「私が優しいのは、君にだけだ……」
エルヴィンは雨の音に
掻き消される程に小さく呟くと、
徐々に雨脚が強まってきた空を見上げた。