第48章 最初で最後の
「このスパイス、珍しいものばかりですね。」
エマはダグにキッチンへ案内され、
レシピを教えて貰いながら、
スパイス棚に目を向けた。
「暇な老人なもので。
色々自分で作ってもみているんですよ。」
ダグはそう言うと、
一つのスパイス瓶をエマに手渡した。
「先ほどおっしゃられていたものには、
これが入っていたんです。」
エマは瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぐと、
独特の芳香が鼻に抜けた。
「……かなり刺激的な匂いですね……」
勢いよく匂いを吸ったせいで、
エマは思わず少し顔をしかめる。
「そうでしょう。
これは、クミンと呼ばれるものなんですよ。」
ダグはエマの反応を見て、
面白そうに笑った後、
「クミンは、昔から
恋人の心変わりを防ぐものだと
信じられていたようです。」
そう言って、エマの目を見入った。