第29章 愛していたい
「私がどれだけ君を愛しているかを
理解して欲しいとは思わない。
君に少しでもいいから愛して欲しい、
なんてことも思わない。
勿論、君に見返りを求めるつもりもない。」
そう言ったところで、
エルヴィンの手はエマから離れ、
「……だが私に、愛されたくない、
とだけは言わないでくれ……」
と、今にも泣きだしそうな声で言った。
エマは思わず、エルヴィンを抱きしめる。
「言わないですよ、そんなこと……」
エルヴィンの身体は未だに熱く、
少し汗が滲んでいる。
だが、相変わらずの
安心できる匂いに包まれ、
エマはそっと目を瞑った。
「………ありがとう。」
エルヴィンはそれだけ言うと、
静かに寝息を立て始めた。