第26章 涙の意味
エマは何も答えず、俯く。
「壁の向こうにいるの、団長だぞ?」
ジャンはエマの手を握る手に、思わず力が入った。
「………ごめんっ……何でだろう……」
エマはそれだけ言うと、
再び目を伏せ、小さくため息を吐く。
「エマさん、
兵長のことが好きなんだよな……?
なのに何で団長が女抱いてるの知って、
そんなことになるんだよ。」
「分かんないよ……
……でも、なんか……苦しくて……」
ジャンの問いに対する
適切な答えは見つかる気もせず、
替わりにジャンの手を握り返した。
「なんだよ、それ……
それってまるでエマさんが団長のこと
好きみたいじゃねぇか……」
ジャンは物憂げな声を出すと、
エマを強く抱きしめる。