第24章 生きている価値
その時、倉庫のドアがゆっくり開く。
それと同時に、
「エマ、無事か?」
と言う、いつもの優しく穏かな
エルヴィンの声が聞こえた。
ほんの数時間前に会ったばかりなのに、
この声がとても懐かしく感じるのは
自分がいかにここで
畏怖の念を抱いていたのかを、
思い知る要因になった。
だが、同時にエルヴィンが来たことで、
この場がどうなるのかを想像し
声を発することすら怖くなる。
「遅かったじゃねぇか。」
「すみません……
憲兵の基地にいたようで、
呼び戻すのに、時間がかかりました。」
ジャンを連れて行った男たちは、
かなり息を切らしているように見える。
エルヴィンを連れて来る際に
走ったのだろうか?
長髪の男を見る目は、
どこか怯えているように感じた。
この状況から察するに、この長髪の男は
この辺りを牛耳っている
ゴロツキの一人なのかも知れない。
エルヴィンは男の一人に背中を押され、
倉庫に入れられる。
そして、再びドアは閉められ、
辺りはまた薄暗い闇に包まれた。