第9章 最高で最悪な一年
本庁をでようとデスクの片付けをしていた時
「櫻さん、例の彼の移動届きました。」
やっぱり。今日出すと思った。
『もらうわ。』
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異動願い
氏名 松田陣平(26)
階級 巡査部長
所属 警備部機動隊爆発物処理班
希望所属先 刑事部捜査一課特別班
希望理由 萩の仇を取るため
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あの性格からこんなに綺麗な字が書けるのね。
毎回その紙を見て思う。
いつも同じ文でいつも同じ字でくる紙。
今度は受理の判子を押して
赤ペンで
「刑事部捜査一課強行犯3係の異動を許可する」
と書く。
多分、つきたくもない係に回されて。とか思うのだろう。
私の手元に来るのは早いけどここからさらに上層部に回されるから早くても彼の手元に来るのは5ヶ月後だろう。
毎年捜査一課でFAXが届き今年が0の年だということを私は知っている。
彼は刑事としてはまだ経験がないから誰かの下に着くのだろう。
下手な動きはできないはず。
私はこれが最悪の選択だということ、自らの手で自分の旦那を殺すなんて思っていなかった。